デグーの餌

副題:突撃隣の晩御飯

デグーの餌には何を与えれば良いのか。どんなことに注意すれば良いのか。飼育に当たって、まずぶつかる問題です。
完全な答えを出すことは難しいかも知れませんが、他の人の飼い方を覗き見ることで、何かのヒントは得られるかも知れません。
それでは、皆さんご一緒に覗きの旅路へ・・・・

デグーの飼育方法が記されたHPは各地にあります。まず代表的な二つのHPから、デグーの餌に関する記述を見てみましょう。

お勧めなのは、良質のモルモットフードを与えることです。良質のモルモットフードは、デグーに必要な全てのビタミン、ミネラル、その他の栄養素を含んでおり、デグーに悪影響を与える物質を含んでいません。糖尿病と白内障の発生率は、糖蜜を含まず糖分の低いモルモットフードを与えることで劇的に低くすることが出来ます。糖蜜は通常、餌をペレット化しやすくするために使用されます。常に、デグーに与える前に糖蜜が入っていないことを表示票で確認しましょう。

他のオーナーには、デグーにチンチラのペレットをモルモットフードに混ぜて与える人もいます。これは非常に安全で、かつ餌に変化を与えることが出来ます。しかしながら、チンチラフードミックスを与えるのは避けてください。ドライフルーツを含むことがあり、常用するには不適当です。

また、けしてラビットフードもしくはミックスをデグーに与えてはいけません。しばしば、Coccidistat compound(抗コクシジウム剤)を含んでおり、デグーにとって危険です。 Coccidistat drugsは、コクシジウム症を防ぐため、添加剤として動物の飼料に良く使われています。Nitroimidazolesのような抗コクシジウム剤は、毒性を持っているため、デグーにラビットフードを与えてはいけません。(コクシジウム剤はIngredients listには常には記載されていません。)
Long, C. (2005) Degu Information [www document]. (accessed on -date-).

まずは、イギリスのHPの餌の部分より抜粋です。個人的には、これまで見たデグーサイトの中で最高の品質のHPで、非常にお勧めのサイトです。正直、こんな訳文読んでないで、上記アドレスから原文にアクセスすることを激しくお勧めします。とにかく、サイトの色使い以外は最高です。
さて、表示票(ingredients list)と訳しましたが、日本と英国ではニュアンスが違う可能性があります。と、言うのも向こうのお国とこちらで、ペットフードに関する法律が違う可能性があるので。
日本の場合、犬猫以外のペットフードの表示票に関しては、法律も自主規制も存在しません。糖蜜のような賦形剤までの記載となると、メーカーの良心に期待するしかないのが現状です。まぁ記載されてても困るんですが。
ラビットフードのくだりについては、果たして日本でも当てはまることなのか不明です。身近なウサギ飼いの獣医に尋ねて見ましたが、彼もウサギの餌にそのようなものが含まれているというのは初耳と言っていました。誰か情報お持ちでしたら教えてください。

さて、有名どころからもう一件。

おそらく貴方は、デグー用の特別な餌をショップで見たことがあるでしょう。そして、それはデグーにとって良いものだと考えているでしょう。それは本当ではありません。私はどんな企業がその餌を作っているのか知りませんが、それは、デグーにとって全く不適当なものです。彼らは、デグーの健康に興味があるのではなく、お金稼ぎにだけ興味があるのです。
Barbora Patakova. Degu Guide

さすが外国というか、実際のHPでは名指しの上に、その製品にリンクが貼ってあります。私にはここまでは出来ません。
その製品は日本では販売していませんが、著者の考え方は非常に大事なことです。フードを買うときには、その会社が、お金儲けを追及するあまり、デグーの健康を損なうようなことをしていないか、しっかり見極める必要があります。
パッケージや、売り文句に惑わされず、良い製品を選びましょう。

この後、著者がお勧めする餌の記述があるんですが、そちらは一部不適切かなぁ・・・と思われる部分があるので割愛しました。ご興味の向きはリンクから原文をご覧くださいませ。詳しく書いてあります。


研究者はどうやって飼育しているのか

デグーが実験動物として使われているのは、ご存知の通りですが、では、実験の際、デグーはどんな飼育をされているのでしょうか?
研究者だからと言って、必ずしも正しい飼い方をしている訳ではありません。一般的な動物ではなく、飼育方法のスタンダードが無いことや、研究者自身の専門が栄養学で無い場合もあり、中にはどうかと思う飼育方法をされている方もいます。
ですが、飼育している個体が桁違いに多い分、いろいろな経験は豊富です。また、トラブルの際、場合によってはトラブルを再現してまで原因を追求するといった行為は、ペットでは考えられない部分でもあります。
そんな、研究者達の飼育方法を覗いて見ましょう。

デグーの成体は、Laboratory Rodent Diet 5001(LabDiet, PMI Nutrition International)を与えています。しかしながら、産後の肥立ちのためには、この餌では栄養価が乏しいことから、泌乳中の雌や幼体には、Prolab RMH 2000 5P06 diet(LabDiet)を与えるほうが、体重の伸びや健康に良いことが判りました。肥満を避けるため、3ヶ月齢からメンテナンスフード(5001)に切り替えています。(中略)これらの餌を十分に与えた上で、アルファルファや他の牧草を適切な量、餌に混ぜて与えています。
Lee TM ILAR J. 2004;45(1):14-24.

デグーの寿命の項目で紹介した先生の飼育方法です。この飼育方法で、少なくとも5年、ほとんどの個体で7〜8年の寿命であり、長いものは11年生きたとの記載をされています。
参考までに5001の栄養組成を示すと、

Crude protein not less than 23.0%
 Crude fat not less than 4.5%
 Crude fiber not more than 6.0%
 Ash not more than 8.0%
 Added minerals not more than 2.5%

ペットショップで売っているデグーフードと比較すると、5001はげっ歯類一般の飼料で、繊維含量が低いのが特徴です。また、V.Cの添加はされていません。おそらく、足りない繊維含量をアルファルファや他の牧草で補っているものと思われます。
デグーが長生きするなら、ちょっと試してみたい飼料です。幸い、しっぽネズミ研究会の皆様のご協力もあって手に入れることが出来ました。我が家のデグーに与えて様子を見てみるつもりです。もっとも・・・甘やかされてきたうちのデグーどもが大人しく喰うかどうかが一番心配ですが。

また、この先生は、産後のデグーや3ヶ月齢までの成長期のデグーへは高栄養飼料を与えた方が、生存率が良くなり、次のお産への期間も短くなると言っています。ちなみに、野生ではデグーの繁殖は年一回ですが、この研究室では4歳半まで年3〜4回のお産をしているそうです。

さて、ここまで書いていてふと気がつきました。
実験動物として一番メジャーなのは、マウス、ラットです。要は研究所で一番手に入りやすい餌がマウス、ラット用の餌なので使っているだけなのではないかと。と、すると他にもそういう飼い方をしている人がいそうです。
以下、ラットの餌派が数名続きます。

ペレットにされたラット用の餌(Panlab)と水がカップで自由採食されました。
R.Garcia-allegue et al,Am J Phystol Regul Integr Comp Physiol 277 523-53

餌(Prolab rodent chow もしくは Purina cat chow)と水は自由に採食出来る様にした。
Roberto Refinetti (1999),Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol 277:1493-1500

なぜしつこく、ラットの餌で飼育している人の例示をするかというと、V.Cが気になるからです。一般的なげっ歯類はV.Cを体内で合成出来るので、マウス、ラットの餌にはV.Cは配合されていないことが多いのです。現に上記の5001には入っていません。
平気なんでしょうか。

とりあえず、時間生物学の学者さんたちが好んでラットの餌を使うのは、手に入れやすいからだ…という気がして来ました。
大学とは言え、餌まで自分で作れる施設があるとは限らず、専門が時間生物学といった餌の組成と実験結果が関係ない分野では、飼育の簡便性がまず大事なのでしょう。
次はラットの餌以外の飼い方をしている人を探してみましょう。

餌は、乾燥種子(ひまわり、コーン、小麦、オーツ)とアルファルファをペレットにしたものを用いた。
Gallardo P, Olea N, Sepulveda FV.(2000) Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 283(3):R779-88.

自分で作っている人を見つけました。見つけました…が…若干栄養価が高すぎな気がします。おまけに配合率が書いていないところも、困ったところです。参考になりません。

番外編

水と餌は自由採食としました。
Martien J et al,(2000) Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol 278:1385-1389

いくら栄養学の論文じゃないと言っても…これは手を抜きすぎ!!!

設定:2005.12.05
改定:2006.08.29